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イギリスのポンド危機とは
イギリスのポンド危機をご存知でしょうか?直近ではブレクジットが記憶に新しいですが、ブレクジット以前にも通称ブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜日)と呼ばれるポンド危機が起こりました。
名前からして恐ろしい下落を感じさせますね笑
このブラック・ウェンズデーでは一人の人間とイギリス中央銀行との壮絶な通貨攻防を巡った争いがありました。
今回はこの一個人vsイギリス中央銀行の通貨攻防について分かりやすく説明していきたいと思います。
欧州為替相場メカニズムとは
1990年代、イギリスは為替を一定の枠に収めようとする通貨管理体制、「欧州為替相場メカニズム」に参加していました。これはユーロ圏を完成させるための第一歩となるもので、この制度によりイングランド銀行はポンドを一定のレンジ内に留めるための為替調整を行っていました。いわゆる固定相場制です。
具体的にはポンドが安くなった場合、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行が外貨を売り市場からポンドを買い集めることでポンド高に誘導し、ポンドが安くなった場合はイングランド銀行が保有しているポンドを売り外貨を買うことでポンド安に導くといったものでした。
この制度とイギリスの経済に疑問をもったのがジョージソロスです。
イギリスの中央銀行、イングランド銀行とジョージソロス
ジョージソロスとは
参照:wikipedia
ジョージソロスとはソロス・ファンド・マネジメントの設立者です。「再帰性」という独自の理論で「市場は常に間違っている」ということを信念に運用を行っています。彼の再帰性理論を簡単に説明します。「再帰性」とは帰ってくるということです。何が帰ってくるのかというと、市場においてある価格が存在したとします。投資家はその価格に影響を受けることによって、その価格の値上がりを捕らえるための投資を行います。
すると投資をした作用によって価格が変化し、また変化した価格から投資家は影響を受けることになります。このループは永遠に続きますので、投資家が正しい価格を捕らえることが不可能になるのです。つまりこのループによって間違った市場価格がついてしまうという意味で彼は「市場は常に間違っている」という考えを持つようになったのです。
そしてソロスはイギリスの経済力に比して通貨ポンドが政府により無理に高く固定されているという結論に至りました。つまりポンドという通貨は間違った価格付けがされていると考えたのです
当時のイギリスの経済状況
当時のイギリスは英国病という社会的な問題に悩まされていました。国を挙げて充実した社会保障制度や基幹産業の国有化等の政策が実施され、社会保障負担の増加、国民の勤労意欲低下などが起きていました。
「ゆりかごから墓場まで」といったキャッチフレーズを聞いたことがあると思いますが、それだけイギリス政府が国民をおんぶに抱っこといった形で手厚い待遇をしており、その結果イギリス経済自体が停滞し財政を圧迫していたのです。
ジョージソロスによるポンドの投機売り
「市場は常に間違っている」という信念に基づいて投資をするソロスは、イングランド銀行により本来の価値以上設定されているポンドに目をつけました。その当時はポンドが短期的に売られポンドが下落したとしてもイングランド銀行が保有する外貨を使い買い支えていました。
しかしソロスは中央銀行が保有する外貨準備には上限があるので、ポンドの売りを浴びせ続ければイングランド銀行の外貨準備が尽きると考えたのです。そして実際に他の機関投資家やヘッジファンドとポンドの売りを浴びせ、安くなったところで買い戻すといった手法を実行したのです。
イギリス欧州為替相場メカニズムを脱退
ソロスをはじめ多くの市場参加者がポンドを市場に投売りし、それをイングランド銀行が保有している外貨準備で買い支えるという構図が出来上がりました。イングランド銀行は対抗策として1992年の9月16日に公定歩合を10%から12%へ引き上げ、さらにその日のうちにもう一度引き上げ15%とした。金利を上げればその通貨は買われるからです。
しかし、ソロス含むポンド売りを仕掛けている市場参加者はこの利上げはイングランド銀行の外貨準備が底を尽きそうだからこそ行われたものであると受け取り、更にポンド売りを招く事態になってしまったのです。
結果、イングランド銀行はポンドを買い支える余力がなくなり固定相場制から変動相場制へと移行しました。一個人が一国の中央銀行を打つ負かすという事は非常に衝撃的で、その後ソロスは「イングランド銀行を潰した男」として世間に知られるようになりました。
ポンド危機後のイギリス
ホワイト・ウェンズデー(白い水曜日)
ソロスにポンドを売り込まれ、イギリスポンドは変動相場制を余儀なくされました。この日はイギリスにとって屈辱的な日とされブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜日)と呼ばれています。しかしイギリス経済ははそこから急回復していくことになります。
今まで無理に通貨高を維持してきた分、固定相場制をやめた事で通貨安が進み海外への輸出が伸びることによってイギリス経済は立ち直ることができたのです。そういった経済の立ち直りが始まったという見方からこの日をホワイト・ウェンズデー(白い水曜日)と呼ぶこともあります。
まとめ
このイギリスの例からも肥大化した財政や無理に取り繕った経済体制は、一度崩壊してしまった方がいいのかもしれません。これ以上悪くなることはないという状態までいけば後はよくなる方向しかないからです。
日本においても積み重なった財政赤字という膿をいつか出すときがくるのでしょうか。。。
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